参加アンソロジーのご紹介『金魚ファーラウェイ』

 今年、寄稿させていただいているアンソロジーがどれもたいへん楽しい企画ばかりだったので、一冊ずつ内容紹介っぽいことを書いていこうかと思います。既に手元に実物があるご本については、感想を書きます。

 まずは山中千瀬さんと笠木拓さんのユニット金魚ファー発行の『金魚ファーラウェイ』です。
 この本は、ネットプリントで毎月配信されていた、塗ると嘘がうまくなるリップグロス・リプリルフールの商人あきひこさんとすずこさんの往復書簡(と短歌)の紙が一冊にまとまって、さらに多彩なゲストのリプリルフールにまつわる手紙・短歌・小説・漫画・評論などなどを集めたものです。
 私はもともと千瀬さんの短歌のファンでネットプリントを読み始めたのですが、第一回に登場する芹ちゃんと菫ちゃんという二人の女の子のエピソードにうわーとなりました。思春期の女の子二人の恋、というのはどうしても悲劇的な方面へ流れがちですが、菫ちゃんはそうならないような選択をする。さまざまな事情でリプリルフールを買いにくるさまざまな客たち、そして何者ともよくわからないすずこさんとあきひこさんの関係などに惹きこまれ、毎月欠かさずコンビニのコピー機に走る日々でした。
 商いをしながら二人が訪れる不思議な街々の様子はカルヴィーノの『見えない都市』を思い出させて、そこもとても好きでした。『見えない都市』の語りが少しずつ緊張感をはらんでいくように、終盤、すずこさんがアリサさんに再会してからの展開にはどこか張り詰めた感じがあって、とくにすずこさんの最後の手紙は、二人ともいつも大丈夫でありますように、いやもちろん大丈夫なんだろうけれど、と切なく読みました。
 本にはネットプリントの後日譚とも呼べる何通かの手紙が追加されています。あきひこさんとすずこさんのやりとりではなく、彼らの顧客たちからの使用報告で、菫ちゃんのその後の顛末はとてもとても嬉しかったです。

 物語だけでなく短歌もたくさん掲載されていて、私は「半月ほど西日」という連作が大好きです。読むたびに泣いてしまいます。

あの部屋を思い出すとき金色の光あふれて燃えるカーテン(山中千瀬)
星の夜の円形劇場その中心にあやまたずありグランドピアノ(笠木拓)

 ゲストの方々の作品もそれぞれバラエティに富んでいて、リプリルフールと金魚ファーへの愛が詰まっている感じが素晴らしいです。
 私は「薔薇色の日々」という掌篇を書きました。福利厚生の一環として(?)オフィスビルの一角で売られていたリプリルフールを買った会社員の話です。

 今回の文学フリマではEホールF-02 一角さんで『金魚ファーラウェイ』が委託販売されるとのことです。
 私も春に買い逃した『二角』を買いに行くつもりでおります……!

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